連載①『城山砦の泣き井戸』


戦国のころ、城山(四〇四㍍)には砦があり、鉱山地域の守護として鉱山奉行の岸嶋伝内が預かっていました。

ところが大坂の陣で銀山も攻め立てられて落城し、伝内の愛娘、玉姫は家宝の金鶏を抱き、城山山頂の井戸に身を投げてしまいました。

それからというものは、城山には金鶏の泣き声が聞こえたり、井戸の中から声が聞こえたりもしました。

金鶏の泣き声は、鳥というより女性の泣き声のようだったといいます。

それは、戦国の世に泣いた一人の不運な姫君の哀切の歌でしょうか、それとも、怨念を訴える悲痛な叫び声であったのでしょうか?

山頂に井戸跡があり、毎年五月上旬には、『この井戸の辺りから眩いばかりの光が輝き、大きく羽ばたく金鶏の姿を見る』という話が残されています。